心の糧—本を読む—

寄稿者(鹿児島教会員T・K)


わたしはいにしえの日々を思い起こしあなたのなさったことをひとつひとつ思い返し御手の業を思いめぐらします。あなたに向かって両手を広げ渇いた大地のようなわたしの魂をあなたに向けます(詩篇143:4-5)

 終戦後、引揚げて間もない昭和二十四年頃、私は保母として養護施設仁風寮に勤務していました。当時は皆貧しく、この部屋の子供達八人も両親とはなれてしまった身寄りのない子供ばかりで私は寝起きを共にしていたと記憶しています。リンゴの木箱を机代りにして、窓から入る朝風を浴び乍ら本を開きました。読書が好きで日本文学全集などをよく読んでいました。


 「人は、人間はどのようにして生まれたのだろう、美しい空や海、山や川はどうして出来たのだろう—」何かある。何かあるものを知りたいとよく思っていました。

 姉からもらった古びた小さな本「聖書」を開いて読み始めたのはその頃でした。


 第一番に目に飛び込んで来たのは、創世記第一章一節「はじめに神は天と地とを創造された」私はハッとしまいした。何かあると求め続けていたのは、神様そしてこの天と地とを創って下さった神さまだった。これが私の求め続けていたもので、この神様が人も創って下さったのだろうかと思ったのです。

 

 今は、その神様に全身全霊浸って過させて頂いています。イエスキリストを現している本、世界のベストセラー聖書。あなたの最も心にひびいた聖句は、と聞かれたら創世記一の一と答えます。私の生涯を一変して下さった尊い言葉、尊い本です。又八人の子たちと過した日々は尊く、又楽しいものでした。


時宜にかなって語られる言葉は銀細工に付けられた金のりんご。(箴言25:11)

 一生懸命に一生懸命に働いていた頃、職場で私は下腹の痛みを覚えました。それでも休まず働きましたが、絶えきれず鹿大病院で検査の結果即入院。一図に走り続けた日びを振り返ると、入院生活は泉の様な新鮮な一日一日でした。体の痛みよりも何やら考えている日々、ふっと本が読みたいという心が湧いて来たのです。


 当時サインズ(福音社発行)が毎月賜られて来ていましたが、忙しさで、その本も滅多に読む事がなくなっていました。ベッドに横になって読むサインズ。特に覚えているのは表紙の次最初に出て来る「金のりんご」の言葉です。どれも心にひびきました。


 部屋の片すみに、小さな雑然とした本棚があります。今は亡き友人に、ふとこの本棚のことを洩らしました。彼女は静かにほほ笑んで言われました。「神さまの本で間垣(まがき)を作って守っていただきなさい。」―「まがき」とは日本海の荒波に面した猟師たちの家々は暴風や台風から家を守る為、山から取って来た大きな大きな笹竹をびっしり連ね、隣近所みんな出て垣根の様に作り立てて家を台風から守るそうです。

 テレビでもその様子が出ているのを見ました。神さまの本で間垣のように囲まれて守られて日びを過したいとこの言葉が忘れられません。